新しき光
「光」
それを生んだ「twilight」や、
「光」にまつわる物語を巡る、
未発表バージョンを含む全5曲を纏めた配信限定EP
「光」という曲が生まれた時の
その偶発的、または必然的な制作当時の背景について、いくつかの説明と補足を書くこととなった。
「twilight」という僕にとって二枚目となるオリジナル・アルバムを2010年に制作した。
これは
「陽が暮れてから夜になるまでの淡く美しい時間」に捧げたコンセプト・アルバムだった。
トワイライトを発表してから程なくして
その頃、共に音楽制作していた友人であり師であるアーティスト・nujabesが亡くなった。
それからしばらくの間、
僕は自己を大きく損なった生活を送った。
部屋にひきこもり、痩せて、とても音楽を作れるような精神ではなかった。
出口のない真夜中に棲んでいた。
そんな時、シンガポールから手紙のようなメールをくれたのが、twilightで歌ってくれていたASPIDISTRAFLYのAprilだった。
(彼女とパートナーのRicksは、トワイライトをリリースしてくれたKITCHEN.LABELを運営している。僕らは長い間の友である。)
彼女は友人として心配して、遠い海から励ましてくれた。
その温かな優しさに気力を貰い、
僕は久しぶりに音楽に触れることが出来た。
まず、なんとなくtwilightを逆再生してみた。
日が暮れる情景の音楽を逆再生することで、
夜明けのきっかけが掴めるのではないか、
そんな想いがあったのかもしれない。
とにかく、未だそれくらいのことしか出来なかったのだ。
ところが逆再生した音には、
思いもよらない新たな輝きが溢れていた。
あの時の感動は忘れられない。
音楽の道がまた開けたような気がした。
一度は閉ざされた扉が開いた。
そう思った。
今度は一人で進まなければならない。
そうして、「光」は生まれた。
やがてこの曲と、twilightアルバムを生演奏するというコンセプトからPIANO ENSEMBLEという編成が生まれ、数年に渡り僕のライフワークとなった。
ついにはアルバム・タイトルとなった大編成の「光」まで到達し、大事な代表曲の一つとなった。
今では「光」といえば、
PIANO ENSEMBLEと聖歌隊による大編成の印象が強いが、僕はこの元々のバージョンを大切に想っている。
その時の状況や、心情が情景として残っているから。
この曲が生まれなければ、音楽を続けていたかどうかはわからない。
「光」には、世に出していなかったバージョンが幾つかあった。
歌だけを逆再生せずそのまま残したり、
早稲田教会スコットホールで初演した時のストリングス生演奏録音を混ぜたりと、多角的なアレンジだ。
これらはリリースを念頭に考えておらず、
純粋な好奇心のもと、僕個人だけが聴くデモとして作っていた。
原曲のトワイライトを含めて並べて聴くと、
この曲にまつわる背景が伝わりやすいかもしれない。
そしていま、世界は少しでも希望の光を求めているのかも知れない。
あるいはあの時の僕のように。
そうふと、思い立ち。
光という曲たちを
ひとつのEPにまとめることにした。
2021 秋
haruka nakamura
【Tracklist】
1. 新しき光
2. 未来
3. 光
4. twilight
5. ひとつ
haruka nakamura “新しき光”
ハルカ・ナカムラ
『アタラシキヒカリ』
デジタル配信
KI-034
2021年11月05日リリース
Vocal by April Lee
from ASPIDISTRAFLY
Violin by Rie Nemoto, Ayako Sato
Cello by Yukari Hara
レーベル : KITCHEN. LABEL
http://www.inpartmaint.com/site/33657/